引用論文
Polack FP, Thomas SJ, Kitchin N, Absalon J, Gurtman A, Lockhart S, Perez JL, Pérez Marc G, Moreira ED, Zerbini C, Bailey R, Swanson KA, Roychoudhury S, Koury K, Li P, Kalina WV, Cooper D, Frenck RW Jr, Hammitt LL, Türeci Ö, Nell H, Schaefer A, Ünal S, Tresnan DB, Mather S, Dormitzer PR, Şahin U, Jansen KU, Gruber WC; C4591001 Clinical Trial Group. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med. 2020 Dec 31;383(27):2603-2615. doi: 10.1056/NEJMoa2034577. Epub 2020 Dec 10. PMID: 33301246; PMCID: PMC7745181.
要旨
背景・目的
世界的パンデミックとなったCOVID-19への予防策として、ワクチンの開発は急務である。
方法
ランダム化二重盲検比較試験。
16歳以上の成人を対象とし、21日間隔にてプラセボもしくはBNT162b2ワクチン(正確にはワクチン候補)を30ugずつ投与した。
BNT162b2: いわゆるRNAワクチンで、このワクチンではSARS-CoV-wウイルスのスパイク蛋白をコードしているRNAを接種することになる。
本試験ではワクチンの安全性ならびCOVID-19への効果を検討した。
結果
2回目の接種を終え7日が経過したのちにCOVID-19感染が確認されたのは、接種群(21720例)のうち8件、プラセボ群(21728例)のうち162件であり、ワクチン候補を摂取した場合には約95%の予防効果が認められた。年齢、性別、人種、BMI、併存疾患の有無で調整を行っても90~100%の予防効果が得られた。
副反応として、短期間にわたる軽度~中等度の接種部の疼痛や全身倦怠感、頭痛が認められた。重度の副反応については極めて少なく、両群ともに有意差はなかった。
結論
16歳以上の成人に対し本ワクチンを2回接種することでCOVID-19への95%の予防効果が得られる。2か月間の追跡調査では、他のワクチンとの副反応の度合いは同等であるといえる。
所感など
ファイザー(Pfizer)のワクチンに関する臨床研究の報告。
本研究は、いわゆる第2/3相の治験である。最近のワクチンに対する関心事である副反応についての評価として「他のワクチンと同等」としており、絶対評価ではなく相対評価を持ち出して無難にまとめている印象。
知り合いが複数名すでにこのワクチンについては接種しており、「打った後ちょっと痛かった」「なんともなかった」などと接種後の疼痛に関してはかなりまちまちな印象を主観的にも受けており、結果と合致するものと認識している。
アメリカの臨床試験の特徴として、race(人種)というサブグループ解析がほとんど必ずと言っていいほど行われており、本調査もその例外ではない。今回の調査では、「白人(Whites)」「黒人もしくはアフリカ系(Black or African American)」「その他」と大別されており、その他はさらに「ヒスパニック・ラティーノ系(Hispanic or Latinx)」「その他(non-Hispanic, non-Latinx)」という区分になっている。日本人は最後の「その他(non-Hispanic, non-Latinx)」に入るが、ここでも95.4% (95% CI: 88.9~98.5)の有効性が確保されており、おおむね9割以上の予防効果があるものだろうと読むことができる。
WHOに中国がパンデミック疑いとして報告を初めて上げた2019年12月31日からちょうど1年が経過した2020年12月31日に発表された論文ということで、人類がいかに早くワクチンを開発したかということを改めて思い知ります。
NEJMは基本的に図とかをほかのサイトに転用するときにお金が請求されるシステムを採用しているので、今回は味気ないですがこんな感じの言葉だけの解説にとどめます。詳細は論文サイトまで。
Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine | NEJM