2020年1月、日本疫学会の学会誌であるJournal of Epidemiologyに、岡山大学の頼藤教授らによる短報(Letter)が発表されました。
2020年1月から7月までの超過死亡を算出し、その傾向をCOVID-19との影響と比較してまとめられています。
引用論文
Yorifuji T, Matsumoto N, Takao S. Excess All-Cause Mortality During the COVID-19 Outbreak in Japan. J Epidemiol. 2021 Jan 5;31(1):90-92. doi: 10.2188/jea.JE20200492. Epub 2020 Nov 25. PMID: 33132284; PMCID: PMC7738637.
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要旨
方法
2020年の死亡統計を、2018年と2019年の死亡統計の平均と比較した。この差分を「超過死亡(excess mortality)」と定義し、2020年1月から7月までを比較した。
結果・考察
超過死亡が▲で示されている。点線の位置が超過死亡±0の指標であるので、超過したのは4月だけであることがわかった。
都道府県別に、COVID-19陽性者数と超過死亡率の相関を示している。これらは正の相関を示すものの、超過死亡率が1を超えた(=2018年と2019年の平均を上回った)のは2都道府県にとどまった。
死因別に調べたもの。超過死亡の低下の一因は、インフルエンザをはじめとした呼吸器疾患などであると考えられた。
管理人の考察
日本においてセンセーショナルに報道されるCOVID-19。陽性者数や死亡者数が注目される中、他の原因による死亡についてはあまり言及されてこなかった。
超過死亡の算出方法は実はさまざまである。今回の方法は、過去の死亡数とそのまま比較する、というかなり単純化された方式で算出されている。これらは人口の推移の影響なども受ける可能性があるので、1つ1つの疾患の影響がどのように死亡に寄与しているのかを判断するには一定の限界があることは認識しなければいけない。しかしながら、それを鑑みても、例えば高齢化する日本社会では死亡数が上がるはずなので、全体の超過死亡がマイナスであるという点はインパクトが強い。
論文でも述べられているが、今回の調査は7月までにとどまっているため、それ以降の政策介入や対策がどのように変化を及ぼすかについては興味深いところである。自殺などはいったん低下したものの、さらに増加しているという報告もあり、あくまで速報的な意味合いを持つという認識も重要であろうと思われる。